数学に感動する頭をつくる

この本を読んだ。

Amazon.co.jp: 数学に感動する頭をつくる: 栗田 哲也: 本

冒頭で心を捉まれた

音感ってあるじゃない。それと似た感じで数感ってのがあると思うんだよね、という始まり。とてもキャッチーだ。

音感(おんかん)とは、音に対する人間の感覚。音楽家に関係する「音感」として、次のようなものがある。

言い意味で裏切られた

この本を読む前は、お楽しみワクワクパズル的な問題がとても丁寧な解説と共に記載されているのだろうと思っていた。しかし読んでいるとイントロダクションからそんな気配はない。そもそもこの本のタイトルは「数学に感動する頭をつくる」であり、内容は数学に感動できる頭はこうすれば作れるんじゃないかな、というもの。タイトルに嘘はないと思った。

著者が秘めている想いも記載されていた チラリ

内容一部にはこの著者が声に出したいことが書いてあった。子供の「数学力」を高めるにはどうしたらいいか悩んでいる親が多い。しかし、そもそも「数学力」って何よ。っとかね。

「○○力」で「○○りょく」っていうのが流行っているような気がする。「力」ってつければ、それが1つのパラメータのような扱いをされる。なんということでしょう。

読み終えて自分が得たもの(1)数感、という感覚があるらしい

最初に出てきた言葉「数感」。その言葉は本を読んでいる間も常に頭の隅にあった単語であり、読み終えて24時間程経過した今も自分の中に残っている単語のひとつであり、劇的とは言えぬまでも、ものを見る目が多少なりとも変化したきっかけとなった。

読み終えて自分が得たもの(2)自分の世界を作る、ことが必要

例えば「なぜゼロで割ってはいけないのか?」という動画。



これを見ていると、数学の世界で使用されている言語を話す人が、私の世界で使っている言語で解説してくれている気分になって、理解できそうな気がする。

もし私が「ゼロで割るなんてそもそも存在しない」という世界の住人なら「なぜゼロで割ってはいけないのか?」という動画に行き着くことさえなかったと思う。もしたどり着いたとしても、端から受け入れようとしないか、新たに「ゼロで割る」というエリアを作るしかなく、受け入れるためにエリアを作るのは大変なことだと思う。

これは1つの例なので、私以外の人がこの動画を見て分かりやすいと感じるかどうかは別。自分が理解するには自分の世界が作られていなければならない、という例。


もっと極端な例を出すと「刃物を人に渡す時、相手には柄の方を向けて渡す」。これが理解できない3歳児はいても、理解できない20歳はあまりいないと思う(たまにいるかもしれないが)。

  1. 刃物で皮膚が傷つく
  2. 傷つくと痛い
  3. 痛い思いはしたくない
  4. 相手に痛い思いをさせたくない

こんな世界があれば「刃物を人に渡す時、相手には柄の方を向けて渡す」を相手に理解してもらうのは容易だろう。

読み終えて自分が得たもの(3)脳内でイメージする、ということが大切

頭の中でイメージする事が大切、というのも印象深い。例えば紙に書いてある図形の問題。私は辺の長さや角の角度など知りえた情報を片っ端から紙に書いてしまう。これはよろしくない。どうよろしくないか。

本を読み終えて自分の事を考えてみる。情報を紙に書く(アウトプットする)と小さな達成感を得てしまう。「よーし、情報はそろえたぞ」。この後自分は何をするか。

そう、しばらくの間は何もしない。厳密に言うと、アウトプットした情報を目で眺めている。そのうち解決するための良いアイデアでも浮かぶんじゃないかなーなんて自分自身に期待している。その結果、解決しない、問題が解けない、解き方すら浮かんでいない、という状態になる。

ではどうすれば今より良くなるか。

  1. 紙に書き出すことをやめて、脳内で記憶し、イメージする。
  2. 問題を解くための道具を選択する(公式や法則など)。
  3. 実際に使ってみる(解いてみる)。
  4. 解けなかった場合、他の道具を使って解いてみる。
  5. 解けたら、2に戻って他の方法や自分の解答が間違っている可能性を探る(裏づけする)などする。

本を読んだ限りだとこんな感じだった気がする。しかし普段から頭を使っていないと2が難しい。本当に難しい。なぜ難しいか。それは浮かんだ道具を片っ端から使ってみようとするから。それがなぜ良くないのか、解答が得られてしまった場合、後の思考が停止してしまうから。そこで解けたーワーイじゃ成長しない。それじゃーだめですよねー

これは今の自分の仕事に直結する内容だったからか、とても参考になった。思い返してみれば、手を動かせない(コードが書けない)状況の時は頭の中でロジックを整理したり解決方法を模索してる。結果、少ない手数で(その時点で)最良のものができたりする。

おしまい

この本を読んで、今までいわゆる頭が良いなと思う人達が無意識に行っているだろう物の見方のほんの端っこが垣間見える気がした。自分がその域まで達する道が少し見えた気がする。

うん、良い本だと思った。頭を使うって素敵(・∀・)うっとり